突然変異を繰り返し薬剤耐性を持ったHIVが、米国や欧州で出現しているが、このHIV突然変異株が貧困国におけるエイズ治療を脅かしている。カリフォルニア大学のサリー・ブロワー教授(数理生物学)率いる研究チームが「サイエンス」誌ウェブ版に発表した報告によると、サンフランシスコや他の都市で蔓延(まんえん)している薬剤耐性HIVのさらなる感染拡大が懸念されている。
南アフリカやほかの貧困国では既にこの突然変異株が広がり始めているが、それに対応できる薬剤の準備はない。データ不足のため発展途上国での薬剤耐性HIV株の感染度合いは分かっていない。「薬剤耐性株が貧困国で増加すれば、世界中の公衆衛生にとって深刻かつ間近に迫った脅威となる」と研究グループは懸念を示している。
2008年末で世界中のエイズ患者は3340万人に達し、最も罹患(りかん)率の高い感染病となった。また所得レベルが中程度以下の国では400万人が治療を受けており、その数は5年前の10倍だ。
世界保健機関(WHO)は昨年、エイズ撲滅を目指した「検査と治療」モデルを発表した。感染者が最も多いアフリカのすべての人々を検査し、感染者を即座に治療することでエイズ拡大を阻止するというものだが、今回の報告が示すような薬剤耐性株を考慮していない点は欠陥といえる。
「WHOが提唱したやり方では薬剤耐性株の耐性が増してしまう。薬剤が通常のHIV株を排除した結果、薬剤耐性株だけが残存して感染力が高まる」とブロワー教授は語る。
研究チームはコンピューターを使って、3種類のHIV治療薬PI、NRTI、NNRTIに対する耐性予測モデルを開発した。
研究に参加したサンフランシスコ総合病院のジェームズ・カーン氏によれば、最も耐性の強い株はブリストル・マイヤーズ・スクイブの「サスティバ」やべーリンガー・インゲルハイムの「ビラミューン」などNNRTI類の薬剤に耐性を持つ。
さらに耐性予測モデルでは、ギリアド・サイエンシズの「トルバダ」などNRTI類や、アボット・ラボラトリーズの「カレトラ」などPI類に対する耐性が13年までは現在のレベルにとどまる一方、NNRTIへの耐性は強まることが予測されている。
サンフランシスコでNNRTIが効かなくなった患者は、ティボテックの「インテレンス」やメルク社のアイセントレス剤などに切り替えているが、「アフリカでは治療をNNRTIに頼っており、サンフランシスコのように代替薬を入手することができない」とカーン氏は指摘した。(c)ブルームバーグ
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