性感染症の母子感染
母子感染は、その感染成立の時期によって胎内感染、分娩時感染、授乳時感染に、また感染経路によって経胎盤感染、上行性感染、産道感染、母乳感染に分類されます。
淋病
妊婦が淋菌に感染している場合は、産道感染により約1/3の児が感染します。感染した児は、結膜炎、敗血症、関節炎、髄膜炎、鼻炎、膣炎、尿道炎などの感染症を発症します。
梅毒
先天梅毒は、妊娠18週以降に梅毒トレポネーマが経胎盤感染することによって生じ、流早産や死産の原因となります。2歳までに発症する早発性先天梅毒と、2歳以降に症状の現れる遅発性先天梅毒があります。
早発性先天梅毒では、粘膜皮膚症状(粘膜斑、水疱疹、手掌足底の発疹、鼻炎、鼻閉塞)、骨病変(骨軟骨炎、骨膜炎など)、肝脾腫、リンパ節腫脹などがみられます。
遅発性先天梅毒では、眼症状(実質性角膜炎)、歯の異常(ハッチンソン歯)、骨病変、神経梅毒、内耳性難聴などがみられます。
クラミジア
クラミジアの母子感染は、産道感染によるものが主体です。子宮頸管にクラミジア・トラコマティスを保菌している妊婦より出生した児は、産道でクラミジア・トラコマティスに暴露され、その後、眼瞼結膜、気道粘膜よりクラミジア・トラコマティスが検出されます。
母体が無治療で分娩に至った場合は、、18~50%の児が結膜炎、3~18%の児が肺炎になります。また、無治療の感染母体から出生した児では、1歳の時点で半数近くの児の気道より、クラミジア・トラコマティスが検出され、また急性気管支炎などの気道症状を反復する症例が多くなります。
直腸や膣から長期にわたって、クラミジア・トラコマティスが検出されることもあります。子宮内感染によると思われる、先天感染の症例も報告されていますが、例外的な症例です。
マイコプラズマ
人から発見されるマイコプラズマ種の中で、性器マイコプラズマ感染として、Mycoplasma hominis,Ureaplasma urealyticum,Mycoplasma genitaliumによる感染症が問題になります。
ウレアプラズマ・ウレアリチクムは、経産道感染や上行性子宮内感染により児に感染して、先天肺炎、髄膜炎、敗血症をおこした症例や、慢性肺疾患との関連も論じられています。早産との関連も報告されていて、妊娠経過に及ぼす影響も大きいとされています。
ウレアプラズマ・ウレアリチクムは、無症状の女性からも高率に検出され、特に妊婦からの検出率は高くなっています。しかし、菌種により抗菌薬への感受性に差があるため、感染した妊婦や児への適切な治療方法は確立されていません。
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスは、経産道感染により児に伝播します。特に妊婦が分娩時に性器ヘルペスを発症すると、新生児ヘルペスを発症する危険性が高く、新生児ヘルペスの死亡率は20~30%とされています。
母子感染は母親が発感染の場合に、50%と高率で発生しやすく、再発例での児への伝播は0~5%程度とされています。母子感染の防止を目的として、母体に性器ヘルペス病変がある場合には、帝王切開による出産が勧められています。
尖圭コンジローマ
妊婦が尖圭コンジローマに罹患している場合は、児にヒト乳頭種ウイルス(HPV)が伝播し、児に尖圭コンジローマや多発性喉頭乳頭種が発生することがあります。これは、数年を経てから発症することが多いため、長期間の観察が必要です。
帝王切開による児の喉頭乳頭種の予防の可否は明かでないため、母子感染防止のみを目的とした帝王切開は推奨されていません。しかし、膣内に多発性の病巣があったり、尖圭コンジローマが経膣分娩に支障をきたすほど大きい場合は、帝王切開が考慮されます。また、妊娠中は尖圭コンジローマが悪化することが多く、外科的除去が勧められます。
ケジラミ症
通常のケジラミ症は、胎児への影響はないのですが、痒みのために掻きすぎて最近やウイルスによる二次感染を併発した場合には、これらの感染症による影響が懸念されます。
トリコモナス症
妊婦のトリコモナス膣炎は、妊娠中の初感染のほうが症状は強いとされています。妊婦から胎児や新生児へ伝播し、児にトリコモナス症がおこることはまれですが、妊娠中のトリコモナス症と早産との関連が指摘されていて、妊娠12週以降の感染妊婦は治療を行います。
HIV感染症
HIVは経胎盤、経産道、経母乳のいずれの感染経路でも、児に伝播します。無治療でのHIV母子感染率は30~40%で、子宮内感染:約5%、分娩時感染:約15%、母乳感染:約20%とされています。
妊婦がHIVに感染している場合、母子感染を防ぐために妊娠中からの抗HIV剤の内服、帝王切開による出産、新生児への抗HIV剤の投与、母乳保育の禁止などが行われます。
肝炎
B型肝炎とC型肝炎のウイルスは経胎盤感染や産道感染により児に感染します。B型肝炎ウイルスの母子感染対策は、分娩時に接触予防策を徹底し、その後はB型肝炎ワクチンと免疫グロブリンを投与します。しかし、C型肝炎ウイルスについては、確立された母子感染の予防対策はありません。
サイトメガロウイルス感染症
サイトメガロウイルスは、膣頸管粘液や膣分泌液、精液によって感染します。サイトメガロウイルスの母子感染は、経胎盤・経産道・経母乳感染のいずれの感染経路でも発生します。
サイトメガロウイルスの胎内感染は、妊婦が初感染の場合に児に小頭症、脈絡網膜炎、頭蓋内石灰化、肝脾腫、黄疸など重篤な後遺症を残します。
成人型T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)
HTLV-1は性行為によって、男性から女性に感染しますが、女性から男性への感染はまれです。セックスによって成人してからHTLV-1に感染した症例からの、成人型T細胞白血病の発症は極めて少なくなっています。
しかし、HTLV-1に感染した女性が妊娠した場合は、母子感染をおこす危険性があり、母親から感染した児は、成人してから成人型T細胞白血病を発症する可能性があります。
HTLV-1の主な母子間の感染経路は、経母乳感染が主体で人口乳哺乳によってキャリア妊婦から出生した児のHTLV-1感染率は減少しました。しかし、経胎盤感染や経産道感染が、3~5%程度みられるため、経母乳感染防止のみでは母子感染を完全に防ぐことは出来ません。
カンジダ
妊婦の膣内カンジダ保有率は、約30%とされるが、この中で治療が必要と判断されるのは15~30%程度とされます。また、妊娠36周以降で、膣から大量のカンジダが検出された場合は、産道感染を防ぐために治療することが勧められます。
カンジダの羊水感染や産道感染により、児の口腔粘膜へカンジダが感染すると鵞口瘡が発生します。また、低出生体重児の場合には、カンジダによる重篤な全身感染症が発生する場合があり、早期産では妊婦カンジダ症の治療は必要性が高くなります。
| 主要起因微生物 | 感染経路 | ||
|---|---|---|---|
| 経胎盤 | 上行性・産道 | 経母乳 | |
| サイトメガロウイルス | + | - | - |
| 単純ヘルペスウイルス | ± | + | - |
| B型肝炎ウイルス | ± | + | ± |
| ヒト免疫不全ウイルス | + | + | + |
| ヒトパピローマウイルス | - | ± | - |
| 梅毒トレポネーマ | + | ± | ± |
| クラミジア・トラコマチス | - | + | - |
| ウレアプラズマ・ウレアリチクム | ? | + | - |
| カンジダ真菌 | - | + | (±) |
表の()は汚染保存母乳による感染
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セックス以外で性病に感染する? |
性感染症 |

